公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
趣味ではなく、生きるために身につけた技術だと思いながら、くだらない質問には答えずに、話を先に進める。
「掃除や洗濯も得意よ。このお屋敷に来てから、なにもさせてもらえないけど」
「ええっ!?」と彼女が大袈裟なほどに驚くから、アップルパイがフォークから抜け落ちて、彼女の足元に落ちてしまう。
すぐに立ち上がった私は、ハンカチを出して落とされたアップルパイを拾い、ディアナ嬢に冷たい視線を向けた。
「食べ物には、それを調理した人と、原材料を生産している人がいることを忘れないで。それとこの世には、リンゴひとつ、ベーコンひと切れさえ口にできずに、慢性的な飢えに苦しむ子供たちが大勢いるということも」
「ご、ごめんなさい……」
彼女が身を竦めて言った謝罪の言葉はきっと、私を怒らせたことに対するもので、今まで食べ物を粗末に扱ってきたことまでは反省していないと思う。
生まれたときから贅沢しか知らない彼女は、食べ物のありがたみを感じたことがないだろうから。
舞踏会での彼女が取り分けてもらった料理の多くを残していたことを思い出し、溜めていた怒りも含めてきつく注意してしまったが、それは計画のうちではないので、すぐに作り笑顔に戻した。
椅子に座り直すと「こぼさないように気をつけてね」と優しい声色で注意し直し、それからは計画通りの話題に修正する。