公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
先に叱った、食べ物を粗末にしてはいけないという教えは、やはりディアナ嬢の心には響いていなかったようで、言われてハッと思い出した様子の彼女は長椅子に座り直し、慌てたように食べ始めた。
私がじっと見据える中ですべてを食べ終えた彼女を、「偉いわね」と幼子に言うように褒めてあげ、その後は立ち上がることを許可してあげた。
応接室の扉を開けて、私たちは無人の廊下に一歩踏み出す。
この屋敷には常時八人の執事がいる。
彼らは今日の企みの妨げになっては困るので、ジェイル様に言って方々に使いに出してもらっていて、この時間は留守にしていた。
下働きの使用人たちには予め、お菓子を持ってきた後は私たちに構わなくていいと言っておいた。
今は彼らの休憩時間だから、別棟の厨房横の食堂に全員が集まり、お茶を飲んでいることだろう。
静かな廊下で、焦らすように先延ばしにしていた最後の宝物について、私はやっと教えてあげた。
「宝物とは、ディアナがもっとも知りたがっていることよ」
「え……?」
つぶらな焦げ茶色の瞳を瞬かせ、それは一体なんだろうと彼女は考えている。
「分からないの? あなたはジェイル様の気持ちが知りたいんじゃなくて? 宝の部屋に行き着いたとき、彼があなたに対して抱いている気持ちを知ることができるわ」