公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
子供たちの姿が菜園にない。
もしや視察団が来るから、建物から出るなと兵士に命じられたのだろうか?
畑仕事は、子供たちの食料を得るための大切な仕事だというのに。
そのことに不満を覚えつつ、孤児院の簡素な木目のドアを開けて中に足を踏み入れた。
小さな玄関ポーチはひんやりと薄暗く、廊下を横切って食堂のドアを開ける。
するとそこに、子供たちがほぼ全員いた。
長テーブルと椅子は部屋の端に寄せられて、開けた場所にみんなが集まり、なにかを囲むように立っている。
私はドアノブから手を離すと、なぜか振り向かない子供たちに声をかける。
「こんにちは、みんなどうしたの?」
「クレア……」
リッキーが最初に振り向いて、なぜか元気のない顔を私に向けた。
昨日、ベーコンが食べたいと言っていた彼に、私は少々のばつの悪さを感じながら、甘瓜の入ったバスケットを掲げて見せた。
「肉やチーズじゃなくてごめんね。でも甘瓜も美味しそうでしょ? 三つもあるのよ。小さく切ったら、メアリーも食べられるかしら」