公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「それにしても、随分と荒らしてくれたものです」とジェイル様が部屋を見渡し呟けば、ペラム伯爵が深々と頭を下げた。
「ディアナが壊した品は弁償させていただきたい。お転婆なのは分かっておりましたが、まさかここまで非常識な娘だったとは……。すぐにでも田舎屋敷に連れ帰り、一から教育し直します。このままで恥ずかしくて、どこへ嫁がせることもできません」
その言葉を聞いたら、花嫁候補者の二人目の始末は完了したことになる。
私の役目はお終いなので、寝室に背を向けて薄暗い廊下をひとり歩き出した。
割れた絵皿や壺を片付けなくては。
自分でやったことなのだから、使用人たちの手を煩わせたくないと思っていた。
階段までくれば、泣き声も叱責の声も完全に聞こえなくなり、ゆっくりとステップを下りる私の靴音だけが誇張されて耳に響く。
「後、ひとり……」
心は既にアクベス侯爵の娘、ルイーザ嬢に向いている。
彼女を片付ければ私の仕事はお終いで、後はジェイル様がゴラスの政治に介入する様子を見届けるだけ。
私はここを離れて、ゴラスに帰れるのよ。