公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
顔を背け、「からかわないで」と溜め息交じりに答える。
腹部にかかる彼の左腕を外そうとすると、そこに圧が加わり、視界が急に傾いた。
「あっ!」と驚きの声をあげた次の瞬間、私は軽々と彼の肩に担がれていた。
「なにをするのよ!」と声を荒げても、返ってきたのはクククと意地悪く笑う声だけ。
私を担いだままで彼は方向転換し、階段を三階へと上り始めた。
「素直になれないクレアを、優越感に浸らせてやろうと思ってな」
「まさか、寝室に連れ込もうというの!?」
「入れば己の心が分かるだろう。可愛がってやるぞ。他の令嬢たちには与えられない、特別な計らいに喜べばいい」
冗談じゃないわよ。
ジェイル様に心を揺らさないようにしたいのに、誘惑してくるなんてずるいわ。
お腹に食い込む広い肩や、黒い上着越しでも分かる筋肉の張り。
私の太ももに触れる逞しい腕に、冷やしていた心がたちまち発熱し始め、心臓は意思に反して煩く鳴り立てる。