公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

欲情というよりは、柔らかな触り心地が単に気に入ったという様子で弄びつつ、「すべて教えてやる」と話し始めた。

話を中断されたくないと思う私なので、仕方なく彼の無礼を許し、横たわったままでそれを聞く。


「あれは二十二年前のことだーー」


当時、生後一年の彼にはもちろんその出来事の記憶はないが、祖父母や両親に繰り返し聞かされた話だということで、まるで見てきたかのように語る。


エリオローネ辺境伯の領地、プリオールセンは、国の東に位置し南北に細長い。

東の北側にそびえる険しい山脈は、長年隣国との境界として機能し、特別に警備を強化せずとも山が領土を守ってくれていた。

その分の兵を南の平野と港に配し、それでプリオールセンの平和は保たれていたのだが……。

二十二年前の夏、新月の闇夜に紛れて、突然隣国の軍勢が山脈側から押し寄せてきた。

知らぬ間にいくつかのトンネルが掘られ、山越えのルートを開拓されていたようだ。

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