公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

死に際の彼らを思う。

きっと悔しかったことだろう。アクベス侯爵にはめられて。

ジェイル様の話し方からすると、黒幕はアクベス侯爵だと判断するしかない。

それはどうやら正解していたようで、胸をまさぐる彼の手は止まり、「すべてはアクベス侯爵の企みだ」と低く鋭く断言する声を聞いた。


「隣国に領地の北側半分をくれてやる約束で、攻め込ませたんだ。王家を含め、誰もがアクベスの所業に気づいていない。いや、その可能性に気づいた者もいるだろうが、証拠もなく面倒ごとに巻き込まれたくないからな。皆、沈黙している。俺も含めて」


「悔しいだろう?」と彼は、さも同情しているような顔で問う。


「そうね。祖父や父は悔しかったでしょう」

「エリオローネの血を引くお前は、領地を取り戻したいと思わないのか?」


灯台に連れていってくれたときも、同じ問いを投げかけられた。

あのときは『思わないわ』と即答したが、今はしばし考える。

とはいっても、無念の思いを引き継ごうとしているのではなく、プリオールセンの民の生活に関心があった。

貴族の血を引いていても、平民として生きてきた私なので、どうしても目線がその地に暮らす民に向く。


「プリオールセンの民は、今、どんな暮らしをしているの? そこに平和と幸せはあるの?」

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