公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
それでも遠すぎる王都の港まで荷を運ぶよりは、経費を抑えられるという事情があり、辺境伯亡き後も渋々、プリオールセンの港を使い続けているということだ。
港の問題の他にもうひとつ。
北東の山脈に水源を持つ大河の上流が、アクベス家の手中に渡ったため、なにか不測の事態が生じれば、オルドリッジ家の農作地帯を潤している川の水を堰き止められる可能性があるそうだ。
今のところ表面上では、婚姻話が出るほどにアクベス家とは友好関係にあるため、川は淀みなく流れ続けているということだが、心配の種ではあるみたい。
「アクベス家とは、港と川のふたつの問題を抱えている」
そう言って話を締めくくった彼は、苦虫を噛み潰したように綺麗な顔をしかめていた。
私は妙に納得して頷く。
だからジェイル様は舞踏会で、一番最初にルイーザ嬢の手を取ったのね。
他の令嬢を放置して彼女と何曲も踊っていたのは、彼女の美しさが理由でも気まぐれでもなく、アクベス侯爵の顔を立てなければならない立場に置かれていたからだ。
アクベス侯爵との会話では、下手に出ている様子はなく、むしろジェイル様が優勢のような
気がしていたけれど、侯爵を本気で怒らせないように、ギリギリのラインでの会話の駆け引きをしていたのかもしれない。