公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

一方、私はシスターのように人間ができていない。

心の中には制御不能なほどの悲しみが渦を巻き、甘瓜の入ったバスケットを落として、子供たちを掻き分けるように棺に駆け寄った。


「メアリー……」


小さな白木の棺に横たわる少女は、野に咲く花々に囲まれ、胸の上で指を組み合わせて唇は薄く開いている。

床に膝をつき、冷たくなったその頬を、震える両手で包み込む。


私の頬に涙が伝わらない理由は、シスターとは違う。

泣けないほどに心が悲しみに掻き乱されているからだ。

十歳のドナが近づいてきて、慰めるように震える私の頭を撫でてくれた。


「クレア、見て。メアリーは笑っているでしょう? きっと天国に行けることを喜んでいるんだわ」


その言葉は、ドナの望みだろう。

残念ながら私には、そう思い込める心の純真さが足りなかった。

メアリーの薄く開いた唇は、笑っているのではなく、なにか言いたげに見える。

もっと生きたかった……幸せになりたかった、と言いたげに……。


思い出しているのは、メアリーに咳の症状が出始めた数日後の、高熱が出た日のこと。

母も同じ病だったから、メアリーも結核に感染しているのだとすぐに私は気づいた。

急いでこの町唯一の診療所に往診を依頼しにいくも、診療代は金貨一枚と言われて驚いた。


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