公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
『子供が高熱にうなされているのよ!? 金、金って、それでも医者なの!』
そう詰め寄った私に、医者は苦しげに顔を歪めて言った。
『わしかて診察したいさ! 貧しい者には無償で治療してやりたい思いはある。しかしな、無料診療をすれば罰せられる。金が伯爵に入らないからな。
悪く思わんでくれ、わしが投獄されたら、この町の医者がいなくなるんだ』
早期に診察を受け、治療を始めていれば、メアリーは治っていたかもしれない。
医者が調合した薬よりは、薬屋で売られている薬の方が安価で手に入りやすい。
しかし、効果を疑問視する声を聞いたことがある。
できるなら、メアリーに医者による治療を受けさせてあげたかったが、一回の診療に金貨一枚なんて、私には到底無理だった。
助かる可能性のあった幼い命が、儚く散ってしまった。
この町の悪政のせいで……。
メアリーの頭をひと撫ですると、私はゆらりと立ち上がった。
痛いほどの悲しみに飲まれた心に、ドロドロと黒く淀んだ怒りが湧き上がる。