公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
一番の末席で食事をしている私の右隣は、マリオット伯爵家の舞踏会で一曲を踊った、マンデルソン侯爵家の次男という青年だ。
家督を継ぐ権利のない次男ならば、侯爵家の息子と言えども、このような席に座らされるものらしい。
向かいにも貴族は座っているが、会話は隣同士でするものだと教わっているので、私の相手は彼しかいないことになる。
前菜からメインまで、ずっと彼の自慢話に相槌を打ち続けるのは退屈なものだ。
マンデルソン侯爵家の中で最も学問に通じ、馬術の腕も長けていると言われても、まるで興味が湧かないし、「私の妻となる女性は幸せになれますよ」と暗に誘うような言葉をかけてきても、その膨らんだ小鼻が気持ち悪いと思うだけだった。
気持ち悪さは彼のいやらしい顔つきだけではなく、私の胃の中も。
食べても食べても、料理の皿は次々と運ばれてきて今、目の前の『牝鹿の腰肉、ポルト酒ソース掛け』は十品目だ。
残すことを嫌う私なので、すべてを胃袋に収め、胃のもたれと戦っていた。
もうそろそろ、デザートを出して終わりだと思うけれど、デザートを食べるのも苦痛に思う。
できることならこれらの料理を、ゴラスに持ち帰って孤児院の子供たちに食べさせてあげたい。
きっとみんな、目を輝かせると思うのに……。