公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
遠すぎてジェイル様たちの会話は聞こえないが、彼はルイーザ嬢になにかを言い、その後にはにっこりと上品で紳士的な微笑みを向けている。
彼女を尊重し丁寧に扱う彼を見て、心がチクリと痛んでいた。
私に対しては、そんな笑い方をしないわよね……。
いつも意地悪く口の端を吊り上げ、こっちの気持ちなどお構いなしにぞんざいに扱う彼。
私とルイーザ嬢の扱い方が随分と違うものだと不愉快な思いが湧き上がり、鹿肉にフォークを突き立てたが、なにを不満に思う必要があるのかと、ただちに自分を戒めた。
ルイーザ嬢が貴族女性としてどんなに魅力的だとしても、アクベス侯爵の娘であるから、ジェイル様が彼女に心を許すことはないと知っている。
ジェイル様の微笑みは、言わば偽物。
これからアクベス侯爵もろともルイーザ嬢を策にはめようとしているのだから、羨むとは馬鹿げた感情だ。
この宮中晩餐会にはもちろんアクベス侯爵も招待されていて、国王のふたつ隣の席に座っている。
ここからではその表情を窺うことはできないが、ルイーザ嬢とジェイル様の親しげに語らう様子を、きっと満足げに見守っているのではないかと推測していた。