公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
晩餐室を出た一行は、長い廊下の三つ隣のドアの中に入っていく。
私も王妃たちに続いて、最後にその部屋に足を踏み入れた。
ここは広々とした応接室。
女性が好みそうなピンクと白を基調としたロココ調の調度類が並び、柔らかく可愛らしい印象の部屋だ。
二人掛けの長椅子が十二脚、四角を描くように設置されている。
椅子が囲う中央には、女性の力では移動できなそうな大きな陶器の花瓶が置かれ、そこに見たこともない花がこんもりと生けられていた。
王妃の隣に並んで立つアクベス侯爵夫人が、すかさずその花を褒める。
「まぁ、これはソルベットじゃありませんこと? 貴重な花をこの季節に咲かせるなんて、さすが王妃殿下ですわ!」
手の平大もある大きなピンク色の花は、ソルベットというらしい。
得意げに話し出した王妃の説明によると、東洋から持ち込まれた稀有な花で、シャクヤクとも呼ばれているそうだ。
花弁が幾重にも重なり、貴族が好みそうな豪華で優雅さのある花。
花瓶に歩み寄った王妃は、その花を手の平にのせて愛でながら自慢する。
「原産国から書物を取り寄せて翻訳させ、庭師に育成方法を学ばせましたの。わたくしの温室には、百株ほどのソルベットが花や蕾をつけておりますわ。アクベス侯爵夫人、日を改めて温室にご案内してもよろしくてよ」