公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
婦人たちは棘だらけの王妃の言葉に安心した様子で、暗黙の力関係の順に、長椅子に座っていった。
十数人ものメイドが給仕してくれた紅茶は、長椅子と長椅子の間の小さな丸テーブルに置かれている。
それを飲みながら、王妃に倣った婦人たちが、私への口撃を開始した。
「クレアさん、勘違いしてはいけませんよ。本来なら、あなたは王妃殿下にお声すらかけてもらえないお立場なのよ」
厳しい声でそう言ったのは、テーブルを挟んで私の隣に座る婦人で、その顔には見覚えがある。
この前の舞踏会の主催者、マリオット伯爵の夫人だ。
私が、ジェイル様の花嫁候補から排除した娘のフローレンス嬢は来ていないが、有力貴族のマリオット伯爵夫妻はもちろん招待客の中にいた。
「ええ、分かっております」と答えても、夫人は敵意ある視線を私に向け続ける。
舞踏会で煩い蝉のようだと非難したことを、まだ根に持っているのだろうか。
注意の後に夫人は、私のプラチナブロンドの髪を「麗しいわね」と嫌みたらしく褒めてから、「どれくらいの殿方が、その御髪を愛でたの?」と、いやらしい質問をしてきた。
答えずに黙っているのは、困っているからではなく、くだらないと思っているため。
反論する価値もない。
そんな私の気持ちはきっと誰にも読み取ることはできないのだろう。
私が困惑していると勘違いして、クスクスとおかしそうに笑う声があちこちから漏れていた。
答える気のない私に、今度は王妃が質問を重ねる。
「クレアさんは、お口がきけなくなってしまわれたのかしら。それとも、頭の中で勘定しているところ? 二十人、いや三十人だったかしらって」