公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
にこやかに提案してくれた執事だが、きっと迷惑に思っているのだろう。
廊下で喧嘩されては困るとばかりに案内されたのは、斜め向かいのドアの中。
ここは少人数用の応接室のようで、長椅子一脚と、ひとり掛けの椅子が二脚のテーブルセットが置かれていて、他は花瓶を飾るコンソールテーブルを置けるくらいの広さしかない小部屋だった。
「お茶をご用意いたしますか?」と問う執事に、私たちは声を揃えるようにして「いらないわ」と断り、執事が出ていった後は座りもせずにドア前で視線をぶつけ合った。
ルイーザ嬢ほどの怒りは私の中にはないけれど、一応形ばかりに睨みつけ、企みに沿わせて冷静に会話を誘導する。
「ルイーザさん、ジェイル様のことは諦めたほうがいいわ。私たちは愛し合っているの。妻として迎えられるのは、あなたじゃなく私なのよ」
そう言い放ったら、綺麗な顔をしかめた彼女が、すぐに切り返してくる。
「結婚の条件に、愛情などは二の次よ。すぐにオルドリッジ公爵があなたを見捨てるように仕向けるわ」
「どうやって?」
「うちの力を知らないのね。お父様に少しの圧力をかけてもらえば、オルドリッジ公爵とて無視できないわ。あなたの家にそんな力はないでしょう? 子爵程度の娘が彼と結婚などと、世迷言を口走ってはいけないのよ」