公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

今回の企みはジェイル様が計画し、主体で動くのも彼だと言っていた。

私が『やれ』と命じられたのはここまでで、印璽を胸に戻すと、無言でドアノブに手をかける。

私ではなく、ルイーザ嬢が出ていくためにドアを開けてあげたのだが、想定通りに彼女は血相を変えて父親に知らせるべく飛び出していった。

はしたなく王城の廊下を駆ける彼女は、晩餐室のドア横に立つ執事に、父親を呼び出してくれるように頼んでいる。

廊下に顔だけ出してそれを確認した私は、ドアを静かに閉めてひとりになった。


この部屋の立派椅子は蔦の模様の布張りで、エリオローネ家の紋章と蔦の形がどこか似ているように感じた。

ひとり掛けの椅子に浅く腰かけると、投げ出すように背を預けて、大きく息を吐き出していた。


私に与えられた仕事は、完璧にやり遂げた。

今頃アクベス侯爵は、ルイーザ嬢から話を聞いてさぞや驚いていることだろう。

あとはジェイル様がアクベス家の人たちを、どのように調理するのかを見守るだけ。

私の素性はアクベス家以外には決して広まらないとジェイル様は断言していたから心配していないが、どうしてだろう。

不安にも似た黒い靄が晴れてくれない。

契約を果たして、彼に私の望みを叶えてもらい、ゴラスに帰る日が徐々に近づいている。

そう思うと、喜びと同時に寂しくて、苦しくて、心が痛かった……。


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