公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
椅子を回り、一歩の距離を開けて彼の横に立ち、「それから?」と話の続きを促す。
「アクベス侯爵は従者の控え室に向かったようだ。連れてきたアクベス家の執事に、なんらかの指示を与えに」
「なんらかとは、なに?」と尋ねると、彼は「さあな」ととぼけてみせたが、明らかに分かっていそうな顔をしている。
この計画の全貌は、私にも知らされていない。
それについても彼は、教える気はないようだ。
それで自分の頭で推理するために、私は目を閉じて考えに沈もうとする。
するとその瞬間を狙っていたかのように、急に腰を引き寄せられ、唇を奪われた。
どうして……。
驚きの中で目を開ける。
そこには琥珀色の双眸があるけれど、近すぎてなにを考えているのかを読み取ることはできない。
意思に従ってはくれずに、勝手に高鳴るこの鼓動。
後頭部と腰を拘束され、たっぷりと唇を犯されてから、堪らずドンと突き放すように燕尾服の胸元を押してキスから逃れた。
すると彼は息遣いの速い私を見ながら、親指の腹で濡れた下唇を拭い、妖艶に微笑する。