公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「キスをせがんで目を閉じたのかと思ったが、違ったか?」
「ち、違うわよ。考え事をしようとしていただけ。なぜ私があなたの唇を欲しがらないといけないのよ」
勘違いも甚だしい。
心を揺さぶってこないでよ……。
振り切れそうな心拍を宥めようと、自然に胸に手がいった。
その仕草を見逃さずにフッと笑った彼は、「素直じゃないな」と私を非難し、「だが、じきにお前は自分の心と向き合うことになるだろう」と予言を与える。
「どういう意味なのよ」と聞いても答えてくれず、「行こうか」と彼は先に立ってドアへと歩き出した。
どこへ行くのかという問いは不要。
晩餐会の招待客が男女に分かれてから、一時間が経過している。
これから男女が合流し、全員で余興を楽しむために広間に移動するのだ。
なんとか気持ちを立て直した私は、彼について応接室を出る。
並んで廊下を歩きながら、結局この先の展開を読めずに、疑問だけを残されたと不満に思っていた。