公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ワハハと笑う声が響いて、金魚から声の方へと意識を移す。
男性貴族たち十人ほどが長い棒を手に、玉がいくつものった台に向かって、玉突きに興じている。
その中には少々頼りなさげな国王の笑顔もあった。
他の男性は婦人たちも交えて、カードゲームを楽しんでいる。
ワイワイと盛り上がるその集団の中には、王妃とアクベス侯爵夫人の背中も見えた。
ホールの奥の方には舞台が作られていて、雇われた劇団が芝居をしている。
観劇しているのは女性ばかりで、ルイーザ嬢はその中にいた。
アクベス侯爵の姿だけが見当たらない。
アクベス家の執事になんらかの指示をしに行った後、まだここに現れてはいないのか、それとも別の用事ができて席を外しているのかもしれない。
ここから先の台本を読まされていない私が「自由にしていてもいいの?」と問うと、ジェイル様は頷く。
人目があるため紳士的な作り笑顔を浮かべる彼は、「ただし、俺の目の届く範囲にいろ」と小声で注意を付け足した。
勝手に広間から出れば、危険があるということね……。