公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

大きな胡桃色の瞳を眇め、憎らしげに睨む彼女だったが、すぐに前を向く。

そんな彼女を見て、私は訝しんだ。

舞台に顔を戻した際に、彼女の赤い唇が微かに綻んだように見えたのだ。

気のせい……?
いや、確かに笑っていた。

睨まれる理由はあっても、微笑される意味はすぐには思い当たらない。

アクベス侯爵が『なんとかするから心配するな』とでも言ったのだろうか。

それで彼女は『どの道、最終的に妻の座を得るのはわたくしよ』と、勝利を確信して微笑んだのかもしれない。

そうだとしたら、やはり私はアクベス侯爵になにかされる危険性があるということだ。

よくよく注意しなければ。
この広間を出た後は……。


「どうして急につれない態度をみせるのだ。我が胸のこの愛を迷子にするおつもりか。答えよ、アマーリア!」


急に意識が舞台に向いたのは、役者がアマーリアという私のセカンドネームを叫んだからだ。

この芝居はどうやら、男女の恋愛物らしい。

主役の男女は貴族風の衣装を身に纏い、背を向けるアマーリアに青年が切なげに呼びかけている。

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