公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
違和感を覚えても、アクベス侯爵の胸の内を読むことはできずに訝しむだけ。
そうこうしているうちに一座の休憩時間は終わったようで、舞台に役者が戻ってきた。
ルイーザ嬢も父親から離れて席に戻ってきたが、視線は合わず、彼女も私の存在を気にしていないようにみえる。表向きは。
どう考えても、変よ……。
舞台上は第二幕。
主役の男性貴族役はブライアンという名前で呼ばれていた。
彼は突然、アマーリアが自分に冷たくなった理由を知るために、彼女の弟を呼び出すシーンを演じている。
「アマーリア」と私のセカンドネームを呼ばれるたびに視線が舞台を向いてしまうが、アクベス侯爵への警戒を怠っているわけではない。
侯爵は第二幕が始まっても舞台下の端で、座長と話し続けている。
座長は台本を広げてページを捲り、文章を指差して侯爵となにやらヒソヒソと相談していた。
アクベス侯爵がなにかを言って、座長が恭しく頷く。
芝居の演出に侯爵が口出ししているような雰囲気だけど、随分と熱心ね。
侯爵はそれほどに、芝居好きなのかしら……。