公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

首を捻って離れた位置にいる侯爵をじっと見据えていると、マリオット伯爵夫人が急に立ち上がった。

彼女だけではなく、観劇中の他の婦人たちも次々と席を立ち、舞台へ上がっていく。

なにが始まるのかと意識がまた舞台に戻されたら、役者の男性が手招きしながら、「さあ、皆さんで祝福のダンスを踊りましょう!」と私たちに呼びかけていた。


どうやらこれは、観客も参加できる芝居のようだ。

王都で流行りの演目や有名な劇団名は、貴族の基礎知識としてジェイル様に教わっていたが、実際に観劇するのは初めてのこと。

観客の参加が普通のことなのかどうか、判断しかねる。

けれど、呼ばれて舞台に向かう婦人のひとりが「まぁ、斬新な演出ね!」と大きな独り言を呟いているので、これは特別なことなのだとすぐに理解した。


観客席に残っているのは、私だけだった。

主役のふたりを囲み、舞台上で手を繋いで大きな輪を作る集団に、私は混ざる気はない。

芝居に興味はないし、アクベス侯爵を観察していたいからだ。

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