公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

人数と比較するとかなり狭いため、綺麗な円を描けずに蛇行しているが、主役のふたりを囲んで皆が手を繋ぎ、ステップを踏みながら回っていた。

私の左隣は役者の男性で、右隣はルイーザ嬢。

観劇中のルイーザ嬢は山場のシーンでも興味は薄そうに見えていたのに、今はどうしてそのように楽しげに笑っているのか。

作りものではなく、心からの笑顔に見えるから、私は混乱してくる。

アクベス侯爵もルイーザ嬢も、理解に苦しむ行動ばかり。

辺境伯の娘が現れたのだから、もっと焦っていいはずなのに、どうして余興を楽しんでいられるの……。


ぐるぐると舞台を二周して、曲は穏やかなものに変わる。

それを合図に皆は手を離し、たくさんのワイングラスをトレーにのせた執事がふたり、舞台に上がってきた。

これも演出のようで、最後は皆で乾杯して主役のふたりを祝福し、舞台を締めるつもりのようだ。


執事の銀のトレーから、最初にグラスを取ったのはルイーザ嬢。

彼女はふたつのグラスを両手に私に向かい合うと、そのうちのひとつを渡してくれた。


「クレアさん、どうぞ」


ニコニコと親しみを込めたような笑みを浮かべての、親切な態度。

一体、どういうことなのよ。

悪態を吐かれるほうが、まだ困惑しなくていいわ……。

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