公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
まさか、毒が!?
ルイーザ嬢の慌てぶりから、私の渡されたワインが毒入りだったことにやっと気づく。
その直後に、激しい恐怖の中に突き落とされた。
殺されかけたことに対してではなく、ジェイル様が今、毒入りワインを口に含んでいることに対しての壮絶な怯えだ。
悲鳴にも似た声で「ジェイル様!」と呼びかけたら、琥珀色の双眸が細められた。心配するなと言うように。
彼は上着の内ポケットからハンカチを取り出すと、そこに口に含んでいたワインのすべてを染み込ませる。
真っ白なハンカチはたちまち赤黒く染まり、まるで血を拭いた後のように恐ろしげに見えた。
そのハンカチを足元に捨てた彼は、周囲の数人にしか聞こえないよう声を落として、恐怖に震える私に言った。
「飲んではいないから安心しろ。おそらく遅効性の毒だろう。口に含んだだけでは効かない。なぜなら、飲んだ者をただちに死に至らしめば、己に火の粉が降り注ぐと、犯人は承知しているからだ」
ジェイル様は死んだりしない、ということよね……。
よかった……。