公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「すまない。驚かせることは承知の上であったが、お前がそれほどまでに心を痛めるとは思わなかった」
後悔の滲む声が降ってきて、私は震える声で彼にお願いする。
「今後は、危ないことは私にやらせて。あなたを失う恐怖に怯えるのは、二度と御免よ……」
彼はなにかを考えているように、一拍の間を置いた。
そして続けられた言葉は、私の願いに対する返事には聞こえなかった。
「クレアは姿も心も綺麗だな……。想定外だ。こんな気持ちにさせられるとはな」
「え……?」
「どうやら俺には無理のようだ。お前に重荷を背負わせることは、できそうにない……」
彼の言わんとしている意味が分からず、説明を求めたかったが、聞き返すことはできなかった。
「オルドリッジ公爵!」と厳しい声色で、誰かが呼びかけたのだ。
ジェイル様は私を離して立ち上がる。
涙を収めた私は、周囲の状況にやっと意識が向いた。
いつの間にか婦人たちは舞台を降りていて、残っているのはオロオロした様子の役者が十人ほどと私たち、それとルイーザ嬢。
ルイーザ嬢は私から一歩離れた横に立っていて、彼女もどうしていいのか分からないと言いたげな顔をして、その視線は舞台下の端に向けられていた。