公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

ガラス鉢とは、扉近くの壁際の台座に飾られている金魚の泳ぐ水槽のことのようだ。

ハンカチを入れれば、毒が水に染み出す。

人体への効き目は遅くとも、小魚ならひとたまりもなく、腹を上にして浮かんでくることだろう。


侯爵はジェイル様を睨みつつ、頭の中で逃げ道を探している様子。

逃すまいとするジェイル様が「クレア」と呼びかけ、私は赤黒く染まったハンカチを拾おうと腰を屈める。

それを見たアクベス侯爵は、やっと白旗を上げた。


「オルドリッジ侯爵、分かりました。別室にてお話を聞きましょう……」


侯爵の瞳は翳り、その声には諦めの色が滲んでいる。

隣に立つルイーザ嬢は、肩を落とし、悔しげな顔を俯かせていた。


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