公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
悔し涙を流したルイーザ嬢。
今までの憂さ晴らしができるのではないか……そう思い、悪女然として笑って言った台詞だったけど、なぜか心は晴れやかなものとは程遠く、陰鬱な雲が厚く垂れ込めていた。
いや、なぜかではない。
ジェイル様を愛してしまったのだから、そうなるのは当然なのだ。
またひとつ、私の望む方へとことが進み、ゴラスに帰る日が一歩近づいた。
それは嬉しいことであるはずなのに、彼と離れがたいと心が切なげに泣いていた……。
オズワルドさんの問いに『目的は果たした』と答えたジェイル様だったが、その後に「だが……」と独り言のように付け足していた。
「なにか不都合が?」と、いつもとは違う主人の様子を近侍が憂う。
「いや……いいんだ。気にするな。それより、メイドを呼んで、クレアの沐浴の手伝いをさせてくれ」
言葉を濁してから、私の沐浴の話にすり替えたジェイル様。
なにかを思いあぐねているのは、なんとなく表情から伝わってきて、オズワルドさんはさらに心配そうな顔つきになる。