公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
いつものようにニヤリと笑ってはくれない口元に、深刻みを帯びた瞳。
彼は騙そうと企んでいるのではなく、心から私を愛してくれているのだと、感じ取った。
その事実は大きな衝撃となり、たちまち心が波打ち、ゴラスと彼の狭間で振り子のように揺れだした。
いっそ、このまま彼の元で……。
いいえ、駄目よ。ゴラスには私の助けを必要とする子供たちが待っている。
あの子たちの暮らしが本当に改善されるのか、この目で見届けないと。
「クレア……」
情熱を帯びた声で囁かれた直後に、唇が重なった。
彼の舌先が口内に侵入し、拐かそうとするかのように私の舌に絡みつく。
愛しい男との口づけに、喜ばない女はいないだろう。
私も例にもれず、肌が泡立ち、心が歓喜に震えていた。
ジェイル様と、離れたくないわ……。
愛情が溢れそうなほどに膨らんで、切なる願いとなり、毒のように心を蝕もうとする。
それに抗おうと、視界を埋める琥珀色を見ないように目を閉じて、孤児院の子供たちの顔を思い浮かべていた。