公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「報告書だと……?」
そう聞き返した直後に兵士はハッとした顔をして、なぜか剣を取り落す。
「あ、あなた様は、もしや……」
「去れ。他人の領地で殺傷沙汰は面倒だ。この俺に剣を向けたことも、今宵だけは忘れてやろう。二度と悪事を働くなよ」
「は、はい! 大変失礼いたしました」
剣を拾って鞘に戻すと、兵士はランプを置き忘れて、慌てたように闇の中に走り去る。
私は民家の壁に背を当てたまま、目を瞬かせて三人の男を見つめていた。
ふたりは明らかに護衛の者といった動きをしていた。
ふたりに守られ、偉そうな口ぶりで兵士と話していた男は……。
男が長身を折り曲げるようにして、土の上からランプを拾い上げると、やっとその顔立ちが確認できるようになる。
男らしい骨格の中にも、繊細な美しさを持つ、美青年。
歳の頃は二十二、三といった若さだ。
切れ長の涼しげな瞳は理知的で、冷たい印象もする。
鼻梁がスッと通って高く、形の良い唇は片方の口角が上がっていて、気位が高そうな、高慢な印象を私に与えた。