公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

広い前庭をまっすぐに進む。

緑の美しい芝生の庭も、池や白大理石の彫像も、見るのはこれが最後だと思うと名残惜しい。

しかし、立派な鉄の門を出てしばらく進むと、他の建物に遮られて、屋敷の屋根瓦も見えなくなった。


それでもまだ車窓の風景の中に、ジェイル様に繋がるものがないかと探してしまう。

大通りに出ると、以前この道を、馬車内の彼の隣の席で見たことを思い出す。

青空マーケットと灯台に連れていってくれたときのことだ。

生まれて初めて目にした海に感動し、灯台の中で海風に吹かれながら、彼に唇を奪われた。

男性との口づけも、あれが初めての経験だったと思い出し、唇にそっと人差し指を当てた。


車窓の景色はどんどん変わる。

あそこにある王家御用達の標章の貼られた店は、ジェイル様が私にたくさんの帽子を買ってくれた店。

商工会議所と劇場、ブティックや郵便施設、病院に銀行……。

かつてジェイル様が解説を加えてくれた、王都の歴史ある重厚で美しい建物が、次々と後ろに流されていく。思い出に浸らせてもくれずに。

そして、しばらく進んだ馬車が道を折れると、遠くの小高い丘の上にそびえる王城が視界に入った。


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