公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
何本もの尖塔を備えた石造りの巨大な城は、晩餐会の夜と変わらず、双頭の鷲の国旗をはためかせている。
あそこに行けば、ジェイル様に会えるのね。
でも、私にはもうあの城に入る資格はない。
貴族として生きることを拒否したのだから。
これは私の意思で決めたこと。
ジェイル様から離れるのも、ゴラスに帰るのも。
それを少しも後悔してはいけないわ……。
心を揺らさないように車窓を見るのをやめた。
そこからは、膝の上の握りしめた両拳を見つめ、馬車が王都から出るのをじっと待つ。
『これでいいのよ』と慰めるように、自分の心に何度も言い聞かせながら……。
王都を離れ、一時間ほどが経ったと思われる頃。
馬車は北へと延びる峠に差し掛かっていた。
ここからしばらくは、山道が続く。
王都にほど近いこの辺りは道幅が広く確保されているとはいえ、小石の転がる山道に、車体が揺れることは覚悟しておかないと。