公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

丸二日の旅は、終わりを迎えようとしていた。


「クレアさん、起きてください。ゴラスはもうすぐそこですよ」


オズワルドさんの声でハッと目を覚まし、車体の壁に預けていた頭を持ち上げ、車窓を見る。

朝靄の立ち込める中に、ゴラスの町の姿が、ぼんやりと小さく浮かんでいるのが見えていた。

帰ってきたのね……。


ジェイル様のことを思うと胸は苦しいけれど、ここまで来れば故郷にたどり着いた安堵感と、親しき人たちの顔を見られる喜びが膨らんでいく。


早くドリスに会いたいわ。

宿屋の朝の仕事を片付けて、それから孤児院に行くのよ。

ジェイル様にいただいた侍女としての給金には、一切手をつけていない。

そのお金でたくさんの食料を買って、持っていくわ。

子供たちは、どんなに目を輝かせることかしら……。


馬車は速度を落としてゆっくりと、ゴラスの町のメインストリートに入っていく。

道の両脇に積み上げられた大量の雪は、春になってもまだ溶けきらずに、土埃を被った汚い色をして残されている。

高い建物のないこの町の空は、王都の空よりも低く重く、雲が垂れ込めているような気がした。

まだ夜が明けたばかりなので、メインストリートには人影がなく、ひっそりと静まり返っている。

活気のない、陰鬱な気配の漂う寂れた町。

出発したときと見た目になんの変化もなく残念に思ったが、その直後に明るい兆しを車窓に見つけてハッとした。


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