公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
徐々に薄れていく朝靄の奥に目を凝らすと、食料品店の窓ガラスに価格改定の張り紙の文字が見える。
バケット一本が三セルダで、リンゴ一個が二セルダと書かれている。
このメインストリート沿いの店は特に物価が高く、私がゴラスを発つ前はその三倍もしていたはずだった。
次に見えてきた町唯一の診療所は、さらに私を驚かせる。
漆喰の塗り壁には、【本日、診察無料】という張り紙がされているのだ。
窓ガラスに額を押し当て、「ゴラスの町は間違いなく変わったわ!」とその変化を喜べば、隣に淡々とした声がした。
「すべてはジェイル様の努力の賜物。感謝してください」
オズワルドさんの方に振り向き、その手を両手で握りしめて笑顔を向ける。
「ええ、とても感謝しています。そう伝えてください。ジェイル様のお陰で、きっとこの町は住みよくなるわ!」
突然手を握られたことで、少々戸惑っているようなオズワルドさんだったが、すぐに表情を淡白なものに戻し、「お渡しせねばならない物があります」と、足元の彼の荷物の中を探り始めた。