公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
オズワルドさんと膝の上の箱に、視線を往復させていた。
オルドリッジ家の損失に繋がるものが入っていると言いたげだけど、そんな大それたものが、こんな小さな箱に入るものだろうか。
いや、入らないでしょう。
「どういうことですか?」と尋ねても、彼は答えてくれない。
「『余計なことを言わずに渡せ』とも言われておりますので」と、不満そうな顔で言っただけだった。
だったら気になることを言わないでほしいと思ったところで、馬車は停車した。
御者が扉を開けると、冷気が車内に入り込む。
王都の暖かさに慣れてしまった体には、ゴラスの春の朝は随分と肌寒く感じられた。
「すみません。宿屋はこの先のようですが、道が細くてこれ以上は馬車では進めません」と御者が申し訳なさそうに言う。
確かにそうだ。
ドリスの宿屋は、メインストリートから逸れた道幅の狭い場所に建っている。
小型の一頭引きの馬車なら通ることができても、この大きな馬車では無理がある。
それで、「ここでいいです。ありがとうございました」と御者にお礼を言って、馬車を降りた。
雪解け水でぬかるんだ土の道も久しぶり。
王都にはない悪路に、帰ってきたのだという実感がひしひしと湧いていた。