公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

「こちらは、コレットさん。今日からふたりのお手伝いさんを雇ったんですよ」

「お手伝いさん?」

「建物の修繕が終わっても補助金に余裕があります。食料も充分確保できるし、私ももう年寄りなので、お手伝いをお願いすることにしたんですよ」


人を雇うことができるほどに孤児院の経営状況は改善している。

それはとても喜ばしいことだ。

お陰で今までは十二歳になったら出ていかねばならなかった子供たちも、まだここで暮らすことができる。

最長十五歳までと期間が延びたことで、年長の子供たちは働き口をゆっくりと探すことができるのだ。

とても嬉しいことだけど……。


「そうなの……」と答えた私の笑顔は、微かに曇る。

私が手伝いに来なくても、シスターが困ることはない。

自分の存在意義が揺らぐ気がして、不安と寂しさを覚えていた。

その気持ちを立て直すために、手に持つバスケットに視線を落とす。

ベーコンの大きな塊に、卵が三十個も。

子供たちは喜んでくれるはずよ。


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