公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
リッキーなら大喜びするはずだと期待していたのに、返ってきたのは「うん、ありがとう」という素っ気ないお礼の言葉。
目を瞬かせてから、「ニコラスも食べてね」と今度は五歳の少年に声をかけたら、こちらからは無邪気で気遣いのない言葉が返ってきた。
「食べるけど、明日ね。ベーコンと卵は、昼の食事でたくさん食べたから」
「そう、食べたの……よかったわね」
私が買って持ってこなくても、子供たちのお腹は満たされている。
とても素晴らしく、幸せなことよ。
それはひしひしと感じているのに、心にはモヤモヤとした寂しさが広がっていった。
手当を終えた後は、「宿屋の仕事に戻らないと」と独り言のように呟いて食堂を出る。
廊下に響く子供たちの楽しげな笑い声は、幸せの象徴のようだ。
けれど、以前のように私の訪問を心待ちにしてくれる子供はもういないのだと知らしめられて、小さな溜め息をついていた。
孤児院を出ると、丘をさらに登って、頂上近くに広がる墓地までやってきた。
母とメアリーに会いたくなったからだ。
すると、メアリーの墓の前に先客を見つけた。
膝を折って指を組み合わせているのは、ドナだった。