公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
その夜、宿泊客用の朝食の下ごしらえを終えた私は、屋根裏の自室に戻ってきた。
エプロンを脱いで椅子に置き、簡素なベッドに静かに腰を下ろす。
毎日が幸せなはずなのに、どうしてこんなにも虚しい気持ちになるのかしら……。
ひとりになると思い出してしまうのは、心を黒く染めてジェイル様とともに企みの中で過ごした日々のこと。
人を罠にはめることは決して気分のよいものではないが、毎日が充実し、今よりも一生懸命に生きていた気がする。
今はなにを目的に生きているのか、よく分からないわ……。
望みが叶えられた後の虚無感。
おかしな自分の心に溜め息をついて、私は立ち上がる。
ベッドの横の粗末で小さなキャビネットの引き出しを開け、中から宝物をそっと取り出した。
それは、両手の手の平にすっぽりと収まる大きさのオルゴール。
銀製の宝箱のような形をしていて、小さなルビーが星屑のようにはめ込まれ、精緻な装飾も施されている。