公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
これは、オズワルドさんに馬車内で渡された箱の中に入っていたもので、ジェイル様からの最後の贈り物。
ゴラスに帰ってきた夜に自室で箱を開け、『身に余る贅沢品を』と目を丸くしたが、オルゴールの蓋を開いてさらに驚かされた。
随分と重たいとは感じていたけれど、中に金貨が入っているとは思わなかった。
その数、二十枚も。
返す術もなく、その金貨はありがたく、孤児院に全額寄付させてもらった。
今、この蓋を開けて赤いビロード生地の上にのっているのは、親指大のガラスの小瓶だけ。
中に入っている液体はきっと、バラから抽出したオイルだろう。
“きっと”というのは、コルクの栓を抜いて香りを確かめていないからだ。
嗅いではいけない。
ジェイル様と同じ香りを嗅げば、せっかく押し込めて今は落ち着いている愛しさが、制御不能なほどに湧き出してしまいそうだもの……。
蓋を開けたオルゴールからは、明るく優しい音色がゆっくりと流れ出す。
枕元にそれを置いて、ランプの明かりを消し、私はベッドに横たわった。
オルゴールを聴きながらだと、不思議と寝つきがいい気がする。
どうしてだろう?
それは、気持ちが音色だけに集中して、余計なことを考えずに済むせいかもしれないわ……。