公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
◇◇◇
それから数日が過ぎた、ある昼間のこと。
宿泊客のための夕食の下ごしらえを始めたドリスの横に立ち、私も大量のじゃがいもの皮剥きをしていた。
「今日は孤児院に行かないのかい?」と、ドリスが聞く。
「外は雨だから、やめておくわ」
これまで、どんなに悪天候でも差し入れを手に丘を登っていたが、今日はそんな気持ちになれない。
雨天のせいというよりは、必要とされていないと感じ、通う意味を見失っていた。
ドリスは私の様子がおかしなことに薄々気づいているようだが、深く追求するほどの疑問にはならなかったようで、別の話題に変えてくれた。
「そうそう、昼前に役人が来て、ゲルディバラ伯爵の御触れを知らせていったよ」
かつての暴君は、今はもう庶民を粗末に扱うことができない。
それを理解しているので、さほどの関心もなく、「どんな御触れ?」と皮剥きの手を止めずに聞いた。
「三日後に、王都から視察団が来るんだってさ」
「えっ!?」
「前は十年に一遍ほどだったのに、これからは半年毎に来るって言うんだ。あたしも驚いたよ。伯爵が悪いことできないように見張ってくれるなら、ありがたいことさ」