公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「ごめんなさい、前にいかせて」
群衆を掻き分けるようにして前列まで出ると、ちょうど教会の両開きの扉が開いて、白い祭服を着た神父の姿が現れたところだった。
続いて視察団と思しき男性六人がぞろぞろと出てきて、私の胸は最高潮に高鳴る。
しかし、そこには愛しき人の姿はない。
見覚えがある男性がひとりいて、それはディアナ嬢の父親のペラム伯爵だった。
それを目にして、勅令で視察に来たのは、ペラム伯爵の一行だったのだと悟る。
ジェイル様じゃなかった……。
大き過ぎた期待の代償は、激しい落胆となり、私の胸を締めつける。
王政の補佐をしているジェイル様なら、望めば彼が視察団としてゴラスに来ることなど容易いことだろう。
ということは、彼がゴラスに来る必要を感じなかったということになる。
二度と私の前に現れない。
それが彼の意思……。
まるで深い井戸の底に落とされたような心持ちでいた。
心も視界までもが暗くなり、世界が黒ずんで見えてしまう。
今生の別れを覚悟して王都を発ったはずなのに、どうしてこんなに落ち込まねばならないのだろう。
宿屋へ引き返す足取りはひどく重たく、体から力が失われていくような気がしていた……。