公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
空には美しい満月が浮かび、宿泊客は皆、眠りに就こうとしている時刻。
今日の半日の私は、青白い顔で働いていた。
ドリスに心配をかけたくないのに、どうにも笑顔をつくることができなかった。
それで『朝食の下ごしらえはやらなくていいよ。早く休みな』と言わせてしまい、申し訳なく思いつつも、ドリスより先に自室に引き揚げさせてもらった。
ランプの明かりを最小に落とした薄暗い部屋の中に、自分の影が亡霊のように板壁に映っていた。
ベッドに座って、今日何度目かの重たい溜め息をつく。
こんなことではいけないわ。
ドリスに迷惑をかけてしまう。
恋愛ごとで日常生活に支障をきたすなんて、あってはならないこと。これまで私自身が蔑んできたことだ。
私はなんて愚かなの……。
立ち上がって、キャビネットの引き出しからオルゴールを取り出した。
これを処分しようかしら。
手元に置いていては、未練がましく彼を思い出してしまう。
そうよ、明日、これをどこか遠くに埋めてこよう。
そうすれば、この苦しみから抜け出せるかもしれないわ。