公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ドリスは単に不機嫌なのではない。私を拒絶し、冷たい態度を取っているのだ。
それを感じて、ますますうろたえた。
そのとき、裏口の板戸がノックされて開き、なぜかリッキーとドナが入ってきた。
リッキーは大きな布袋を担いでいて、ドナは手ぶらだ。
孤児院の子が宿屋に来たのは初めてで、目を瞬かせて「どうしたの?」とふたりに尋ねた。
リッキーは帽子の鍔をいじりながら、やや緊張した面持ちで説明する。
「俺、ここで住み込みで働かせてもらえることになったんだ」
しっかり者のドナは、いつもと変わらぬ笑顔を浮かべて言う。
「私もよ。二カ月後の誕生日に孤児院を出て、ここで働くの」
驚きのあまりに、すぐに言葉が出せず、ふたりとドリスに視線を往復させていた。
いつの間に、そんな話になったのだろう。
私にひと言も相談してくれないなんて、水臭いじゃない。
でも、そんなことは不満にはならず、むしろ喜んでいた。
補助金のお陰で、最長十五歳までは孤児院にいられるように変わったが、年長の子供たちには、働き口を探さねばならないという試練が消えたわけではない。