公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
十二歳も半ばを過ぎたリッキーと、もうじき十二歳になるドナ。
ふたりがこの宿屋に職を得られたことは幸運だ。
ドリスは間違いなく最高の雇い主で、忙しくも楽しく幸せに暮らしていけることを、私はよく知っている。
ドリスは相変わらずしかめ面のままで、じゃがいもの皮を黙々と剥き続けているけれど、私は彼女の腕に触れて、喜びの中でお礼を言った。
「ドリス、ありがとう! ふたりと一緒に働けるなんて、嬉しいわ。そんなに人を雇えるほどに、宿の経営も潤っているのね。すべてが素晴らしいことよ!」
するとドリスに手を払われて、背を向けられた。
私を見るのも、触れられるのも嫌そうなドリスは、次のじゃがいもに手を伸ばし、それを剥きながら冷たい声で「いいや」と否定する。
「宿の収益は、そんなに上がってもないさ。三人も雇えやしないよ。だから、クレアは出ていきな。あんたがいなけりゃ、ふたりを雇ってやれるんだから」