公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ドリスは裏庭にいて、私が干したシーツや枕カバーを取り込み、畳んで籠の中にしまっていた。
私に気づかないふりをして、黙々と手を動かし続けている。
その表情は見えないけれど、きっと今、不本意ながらも私に冷たくしたことで、胸を痛めていることだろう。
そしてドリスを苦しめたことに、私もまた、胸を痛めていた。
二歩の距離まで近づいて、その背におずおずと声をかける。
「リッキーに聞いたわ。私を思って言ってくれたのね。ありがとう。でもね、私の居場所はここよ。ジェイル様の屋敷に、居場所はないわ」
ジェイル様は私を愛してくれた。
その愛ゆえに、陰謀渦巻く貴族社会に私を置きたくないと、ゴラスに帰してくれたのだ。
私がこの町で生きることは、私だけではなく彼の望みでもある。
今更ジェイル様の屋敷を訪ねたとしても、追い返されるかもしれない。
いや、会ってさえくれないことだろう。
視察団に別の貴族を寄越したという事実からは、私の前には二度と現れないという彼の決意が感じられた。