公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
そう思って言った『居場所はない』という言葉に、もうひとつ、ここにいる理由を加える。
「恋なんて、贅沢で愚かなことをしている暇はないのよ。私がいないとこの宿屋は困るでしょう? ふたりを雇っても、一人前の働き手になるまでには時間が必要よ」
そうよ、私に贅沢は不必要。愚か者にもなりたくないわ。
これをきっかけにジェイル様への恋慕を断ち切ってみせる。
ドリスを苦しめたくないから。
ドリスはまだ背を向けているけれど、シーツを取り込むその手は止まっていた。
私は目尻に皺が寄るほどの笑顔を作って、その背に明るい声をかける。
「籠を貸して。洗濯は私の仕事よ」
するとドリスが急に振り向いた。
干してあった生乾きの毛布を引っ掴むと、それを丸めて私に投げつけてきた。
目を潤ませて顔を赤くし、大声で私を叱りつける。
「居場所がないなら、作りなさい! 本当は怖くて戻れないんだろ? 宿を理由にしてんじゃないよ!」