公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
◇◇◇
翌日、空には一面に灰色の雲が広がっている。
まるで私の心を写したかのような空を見上げて、建物の間の路地とも呼べない狭い隙間に潜む私は、じっとそのときがくるのを待っていた。
正午を知らせる教会の鐘の音が鳴り響く。
その音がいつもより小さく聞こえるのは、周囲が話し声で賑やかなせいだ。
目の前の石畳の道沿いに、身なりの良い人々が大勢集まり、思い思いに口を開いていた。
ここはメインストリートで、左奥の方にゲルディバラ伯爵邸の要塞のような石塀と鉄の門が少しだけ見えている。
これからあの門が開き、馬車や馬に乗った視察団の一行が出てくる予定。
視察を終えてゴラスを発つオルドリッジ公爵を見送るようにと、比較的裕福な町の民のみが、沿道に集められているのだ。
「鐘が鳴ったぞ。そろそろじゃないか?」
「早くしてくれ。こっちだって仕事があるんだ」
賑やかに話をする人々の中には、迷惑そうに話す者もいて、警備にあたる兵士に睨まれると、肩をすくめて話題を変えていた。