公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
そのとき、「来たぞ!」という声がして、すぐに馬の蹄の音も聞こえてきた。
護衛の兵を乗せた馬が数頭続き、その後ろに馬車が二台。
前を走る馬車の方が、後ろのものより大きく立派に見える。
二台の馬車の後にはまた、視察団の兵を乗せた馬が続いているようだ。
オルドリッジ公爵は、おそらく立派な方の馬車の中だろう。
彼ともう一度話をするには、あの馬車を止めるしかない。
私は建物の隙間から出ると、ゴラスの兵に見つからないように身を屈め、旗を振って見送りをする群衆の中に潜り込む。
それから、細い体をねじ込むようにして、前へ前へ。
最前列には大柄な男がいて、その背中に隠れるようにして待機した。
男の陰から覗くと、先頭の護衛の兵を乗せた馬が目の前を通過したところだった。
公爵の乗った馬車が目の前に来るまで、もう少し。
一頭二頭と見送り、馬車を引く馬がついに目の前に来ようというとき、私は大柄な男の陰から飛び出して、両腕を横に伸ばして立ちはだかった。
御者が慌てて手綱を引き、馬が嘶いて脚を止める。
私と馬の距離は、わずか拳三つ分ほどで、馬に跳ねられてもおかしくないギリギリのところだった。