公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ジェイル様をたぶらかして、ゴラスを救わせようと色仕掛けを企んだときの自分を思い出す。
「これでは、最初と変わらないわね」と独り言を呟いて、フフッと声に出して笑っていた。
擦り剥いた膝の手当てもせず、決意と愛情に突き動かされるように走り続け、ついにオルドリッジ公爵邸の門までたどり着いた。
H型をした三階建ての荘厳な屋敷が、美しく整えられた前庭の緑の奥に、どっしりと構えている。
冷たい雨に打たれても、窓辺には明かりが灯され、とても温かそうに目に映った。
半年離れていただけなのに、とても懐かしく思うのは、ゴラスで随分と悩み苦しんで、恋しさを募らせていたせいなのか……。
幸いなことに門は開かれて見張りの姿もなく、私は弾んだ息を整えて、芝生の中の石畳の道を屋敷へと歩いた。
玄関ポーチの階段を上り、気高さと財力を知らしめるような重厚で立派な扉の前に立つ。
ドア横のスコンスには火が入り、汚い身なりの私を優しく照らしてくれていた。
いよいよ、ジェイル様に会えるのね……。