公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

ああ、ジェイル様だ。

やっと会えた……。


「クレア!」と彼が叫ぶと、執事が「えっ!?」と驚きの声をあげ、私を捕らえていた手を即座に離した。

自由になった私は踵を返し、ジェイル様も駆け寄って、私たちは玄関扉の前で抱き合った。


ずぶ濡れの上に転んだこともあって、ひどく汚い身なりの私。

そんな私でも彼はしっかりと腕に抱いて、まだ愛情が残されていることを教えてくれた。


押し潰されそうなほどに強く抱きしめてから、彼は腕を緩め、私の被っているフードを外す。

美しいと人に言われるプラチナブロンドの髪は乱れ、白い肌には泥汚れがついていることだろう。

それでも彼は私の頬を両手で挟んで顔を覗き込み、優しい笑みを浮かべてくれた。

「なぜ戻ってきた?」と問う声には、嬉しそうな響きを感じる。


帰ってきた理由は、ジェイル様に会いたかったからに他ならない。

けれども、すぐに返事をせずに一秒の間を置いたのは、考えていたためだ。

それだけの答えでは、腹黒い彼は満足してくれないのではないかと。

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