公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ゆっくりと歩み寄り、ジェイル様の目の前で足を止めると、彼は鼻を鳴らした。
「愛を求めて戻ってきたという女が、随分と不愉快そうじゃないか」
「違うわ。考えてるのよ」
「なにをだ?」と問う琥珀色の瞳をじっと見つめ、引っかかっていたことを真顔で聞いた。
「ねぇ、もしかして、私が戻ってくることを分かっていたの?」
玄関前での再会に、彼は嬉しそうではあったが、そこに驚きは薄かったように思う。
それと、もうひとつ。
『やっと言ったな』と、ニヤリと笑って言った言葉も疑問だ。
それらに答えをもらえないうちは、素直な喜びだけに浸ることができないのだ。
すると彼の口の端が明らかに吊り上がる。
なにかを企んでいるのを悟り、私は眉をひそめた。
「私のために、ゴラスに帰れと言ったんじゃなかったの?」
「俺は得にならないことはしない。狙った獲物も逃さない」
獲物とは、私のことに違いない。
いや、私と辺境伯領と言った方がいい。
やはり彼は私が戻ってくることを予想して、ゴラスに帰したのだ。
その目的は、私が自分の意思で望んで彼の妻になりたいと言わせるため。